土地区画整理事業区域内に存する建築物等の移転又は除却(以下『移転』という。) が必要となった際、権利者から理解と協力が得られず、施行者が定めた移転期限までに建築物等の移転が実施されない場合に土地区画整理法第77条の規定に基づき、施行者が自ら移転を実施することです。
建築物等の移転の行為は、可能な限り権利者に委ねていますが、権利者に移転の意思がなく、他に施す手段も無い等、真に止むをえない理由がある場合、移転の責務を負う施行者が直接施行を実施する必要があります。しかし、実施するためには以下のような必要性の検討・整理等が欠かせません。
また、建築物等の移転が適切に行われず、他の権利者に損害を及ぼしたときは、建築物等の移転の責務を負う施行者の過怠(不作為)とされ、損害賠償責任が生じるおそれもありますので留意しなければなりません。
以下の図1は、法第77条に基づく法手続き等の手順ですが、『直接施行の実施』については、法令に目を通しても具体的な内容が明記されていません。
実務上、争いが想定されるため、瑕疵等の無いように、行政実例や判例を踏まえた検証、個別具体的な対策・体制等の準備が必要です。そこで、経験豊富なコンサルタントのサポートが必要となります。
施行者が建築物等の移転を行う場合に法第77条第2項の規定に基づき、「相当の期限」を定めて移転の「通知」を行い、かつ権利者自ら「相当の期限」までに移転を行う意思の有無について「照会」する法手続きをいいます。
移転の意思 | 移転の協力が得られない主な例 |
---|---|
あり ※諸事情により移転を行えない場合 |
関係権利者等(借家人、相続人等)間にトラブルがある場合等。 |
なし | 事業自体に反対、仮換地・補償金等への不満、提訴の準備、所有者不確知等。 |
※上記の例によらず、思わぬところに解決の糸口が見つかる可能性もあるため、個別の事情を十分斟酌して、可能な限り協議移転を促すよう、権利者の対応に当たるべきです。
本来、事業に影響する建築物等の移転は、法第77条において最終的には施行者に責務があるとされています。
しかし、私有財産である建築物等の移転は、権利者が自ら行った方が望ましいため、実務的には自ら行う意思の有無について確認し、できるだけ権利者に移転を委ねる取り組み(協議移転)がなされております。
このような取り組みを行ったとしても、最終的に建築物等の権利者から協力が得られないときは、施行者は事業上移転の責務を負うことになりますので、いざという時に滞りなく実施へ移行できるように、前段の法手続きや実施方針・実施体制等に十分な検討及び準備期間が必要です。
直接施行の準備と任意協議は並行して進めていくことになりますが、図1の『移転又は除却の通知及び照会』から『施行通知』までの期間は、粘り強く折衝を進めることが大切で、協議移転が促進される時期だと捉えることもできます。
権利者に直接施行の意思表示を示すことで、相手方に移転の実施を促し、同意に至る事例がこれまでに多くありました。移転又は除却の通知及び照会の後も、相手方の納得が得られるように、可能な限り話し合いを行い、直接施行の回避へ向けて取り組むことが重要です。
一方、いわゆる権利者の合意を得て行われる『合意型直接施行』で解決した事例も多くあります。
当社も直接施行の検討と並行して、豊富な実務経験から適切なアドバイスを行い、なるべく協議による移転の実施が促進されるように取り組みます。
当社の業務内容と致しまして、計画書等作成業務から直接施行の実施、実施後の対応補助まで円滑に作業が進むようにサポートを致します。また、当社は多数の検討及び実施業務を手掛けており、これらの豊富な経験に基づき、案件の実情に即した対策を提案し、建築物等の移転の実施へ向けて業務に取り組んで参ります。
※直接施行の実施期間中は、施行者が責任をもって全体を取りまとめ、執行することになりますが、当社は『直接施行補助業務』を通して移転完了までサポート致します。
番号 | 場所 | 業務概要 |
---|---|---|
1 | 東京都内 | 障碍を抱える権利者を相手に合意型直接施行を実施した事例 |
2 | 千葉県内 | 店舗と駐車場を対象とした2ヶ所同時施行を検討した事例 |
3 | 千葉県内 | 非合意型直接施行によるガソリンスタンドの移転の実施を検討した事例 |
4 | 兵庫県内 | 相続問題で揉めている故人の空き家に対して合意型直接施行を実施した事例 |
5 | 青森県内 | 民事調停で解決を図った後、合意型直接施行を実施した事例 |
6 | 千葉県内 | 居宅と共有私道を対象とした中断期間を設けた直接施行を検討及び実施した事例 |
※平成19~29年度までの調査・検討業務実績98件うち、実施16件(合意型含む)
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